各地の海水の比重と塩分濃度

昨日の続きです。
昨日のグラフをもとにお話しを進めたいのですが、そのグラフが画面に
ないとわかりづらいので、再度掲載しておきたいとおもいます。

これです。


各地の海水結果拡大


これを見ると、次のことがわかります。

これは、中1の男子とわたしがあれこれ議論したことを彼が書き留めた
もので、それをもとに、述べてみたいとおもいます。


やや範囲を広くとった図(昨日の記事の中で2つ並んだグラフの上の方です。)
をみると、多少のばらつきがあるとはいえ、線形近似曲線を描いてみると、
27℃の真水のデータを含めてほぼこの直線上に点が並びました。

比重の換算値(温度補正した値)と塩分濃度は比例していました。
つまり、測定は正しく行われたと考えらます。

(パチパチパチ!)


しかし、点が集中している部分を拡大した図(上の図です。)では、
宮城県と沖縄の一部がやや線形近似曲線からはずれているように
見えますね。

これは、塩分濃度屈折計が0.05%単位でしか読み取れないことと境界線が
ぼけているための読み取り誤差であると考えらます。
ここは大目に見たいとおもいます。


このグラフから、点の集まりに3つの大きなグループがあることがわかりました。


1つは塩分濃度の濃いグループで、沖縄県恩納村内の2つの地点と
フィリピンのパングラオ島、それに島根県松江市美保関町七類です。

七類以外は南の海であり、海水の蒸発にともなって塩分濃度が上がって
いるから高いのではないかと考えられます。


七類は日本海ですが、海水の採集の際に、足場が悪くて沖合まで出られず、
流れがあまりなく、大きなタイドプールのようなところで採取してしまいました。
これはわたしの反省です。

けっこう水をくむのも大変で、砂やゴミを混入させないためできるだけ沖の方の
水を汲みたいのですが、なかなかそれもできず、しかも波があると足元が
おぼつかなく、ほんとうに苦労します。
おそらく、海水をくんで来てくださったかたも、
「甘くみていた」
とお感じになっているとおもいます。


ともあれ、なぜ島根の海がフィリピン並みに濃かったのか?
それは、タイドプールのようなところでサンプリングしてしまったから
だったわけです。

日本海の海であっても、流れのない浅い場所では、真夏日の晴天の正午
前後には、うんと濃くなっていることがわかりました。

なお、世界の海の塩分濃度を見ると、やはり赤道付近の暖かい地方では
塩分濃度が高いことがわかります。



もう1つのグループは博多、宮城、太田川河口それに沖縄南城市新原ビーチです。
塩分濃度がおよそ3%ですから、ほぼ海水の平均値といえます。

塩分濃度が高いと予想した沖縄県のサンプルのうち、一つがこのグループに
入りました。
このサンプルは南城市新原ビーチのものです。このビーチの周辺には大きな川が
流れ込んでいないので河川水で薄められることは考えにくいのです。
いったいなぜなんだろうと考えました。

そういえば、海水を採取していただいた8月7日の前々日に勢力の強い台風5号が
ちょうど沖縄を通過していたことがわかりました。
その影響で沖縄南部の全域で降水量が増え、遠くの河川から大量に真水が
流入したのではないでしょうか。

真水は海水よりもかるく、海水と意外にも混ざりにくいので、海の表面を
流れ、それが採取されたのではないかと考えられます。


太田川放水路の河口から750mもさかのぼったところの水もこのグループに
入りました。予想以上に塩分濃度が濃かったわけです。
これは、満潮時に合わせて採取したため、海の塩分濃度とほぼ同じになったと
考えられます。

博多は平均並みの濃度であり、宮城も平均並みですが、宮城では塩分濃度に
比べて比重の値がやや低く出ました。この理由はよくわかりません。
測定の誤差だろうとおもわれます。


2つのグループから大きくはずれたのが京都の海水です。
この採取地点は舞鶴市神崎の海水浴場で、このすぐ近くには一級河川の
由良川が流れ込んでおり、この平均流量は46.7㎥/sです。

この影響で海水が薄められているのではないかと考えました。


などなど、このグラフひとつで、いろいろなことが考えられ、知的好奇心を
満たしてくれますね。



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各地の海水の比重と塩分濃度

もともとは、中1の男子が、わたしがおそるおそる洗って乾燥させていた
比重ビンに興味をもったことから研究は始まりました。

この比重ビンは、もとはといえば、ある短大が閉校する際に、物品を
放出するという折りに知人の先生から声を掛けていただいて入手
したものです。

「これ、なんですか?」

「それ、比重ビン。」


比重びん


「へっ?」

以下延々と会話は続きますが、省略します。

ともかく、なぜか彼はたいへんに興味をもったのです。

そこで、これ、使ってみようとなりました。


興味をもっているということは強いですね。
あれよあれよという間に使い方をマスターしてしまいました。


サンプルの温度によって換算する必要があり、これについては
けっこう理解するのに手こずったようですが、いまのところおそらく
理解しきったとおもいます。

そこで、あれこれ調べようじゃないかってことになり、わたしも山陰の
水を持ち帰ることにして協力しました。

それ以上にお母さんの人脈によって、各地の海水が集まりました。
正確に言うと、いまも集まりつつあります。


途中経過です。

塩分濃度も測定していますので、その値を横軸に、そして比重を縦軸に
とっています。

ほぼ一直線上に点が並んでいますので、測定方法は誤ってはいなかった
ことがわかります。

よくやったと誉めてやりたいですね。

各地の海水結果



さて、点が密集したところを拡大したのが、次の図です。


各地の海水結果拡大


いやー、このグラフから、面白いことがいろいろわかりました。

明日、そのことについて、触れてみたいとおもいます。

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海水の集まり具合

中1の男子が1人で海水の塩分濃度と比重をひたすら測定して
います。

いろいろなことがわかりかけてきました。

そのお話をする前に、海水の集まり状況を地図で示しておきましょう。
この中には、これから採ってきていただく予定の海水も含まれています。


size採水場所マップ


南九州、四国のサンプルがないのですが、まあ、これは来年にむけての
課題としておけばいいでしょう。


瀬戸内海各地のデータもほしいところですね。

とはいえ、言うは易く行うは難しで、広い広い海の水をあっちからこっちまで
いったいどうしたら集まるのか。

フェリーに乗って時々ロープを付けたバケツを海に放り込んで集めるのも
いいかもしれませんね。

こういったことを考えるのも楽しいですね。


沖縄のサンプルが4つも集まりました。これにはびっくり。
しかも、ほぼ同じ場所でありながらデータが違ったり、
台風の後のサンプルではうんと塩分濃度が低かったりと、
なかなか面白い結果が出つつあります。


また、外国のサンプルが含まれることで、世界を対象として研究
しているようでちょっとかっこいいですね。

フィリピンの水は小3の女の子が持ち帰ってくれました。

暑い地域は塩分濃度が高いと予想していたとおり、測定してみると
やはり高い値がでました。


たった120mlの水を入手することで、塩分濃度と比重を出すことができ、
そのデータを比較したり、予想と合わせて考えてみたり、なかなか
探究心をくすぐる研究です。


お礼の葉書を出しながら、「こんどはできたレポートも作ってあげなければ。」
と、なかなか急がしい夏休みを送っているようです。



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スナガニの吸水毛にもトゲがあった

昨日、「最後」ということでスナガニの吸水毛について写真を
掲載しました。

やれやれという気持ちと同時に、「まてよ」っていうのが先に来ましたね。

砂地の最上部、満潮でもほとんど潮をかぶらない位置で生活する
スナガニの給水毛が、こんな単純なはずではないのではないかって
いうのがことの発端です。

詳細に調べたところ、やはり単純ではなく、トゲがありました。


sizeretouchDSC_4247.jpg



sizeretouchDSC_4253.jpg


生きものたちの体の巧妙さを、思い知らされますねえ。



さてどん尻に控えしは、スナガニでござる

干潟のカニたちが干潟で活動中に水を補給するために備えている
とおもわれる吸水毛のシリーズの最後です。

「とおもわれる」というのは、あくまでも私見です。

「吸水毛」も、わたしが考えた仮称です。

ともかく、脚の付け根に1房または2房の毛の束があるのです。

カクベンケイ、ハクセンシオマネキ、コメツキガニと続き、今日は最終回で
スナガニです。

まずは、脚の付け根にある毛の房の全体像をご覧ください。


sizeretouchDSC_4202.jpg


これを顕微鏡で見たのがこちら。

まずは、毛の先端部分です。


sizeretouchDSC_4206.jpg


続いて、毛の切断部分です。


sizeretouchDSC_4281.jpg


先端部分の写真からは、比較的シンプルで、ハクセンシオマネキの吸水毛の
ようにくびれがはっきり見えます。

トゲや毛は見えませんね。

一方、付け根の部分は驚きです。
くびれではなく、逆に膨らみがたくさんありますね。

先端部分は水を水やすくスマートになっており、付け根の部分は
水を蓄えるために空間が多くなっているのではないでしょうか。

いやー、おもしろいですねえ。

中学生がこれらの発見を、いままとめつつあります。

どこかで発表したいねえとも言っています。



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コメツキガニの吸水毛

マニアックな記事が続いて、いい加減にしろといわれ
そうですが、当の本人はいたって真面目で真剣です。

岩を走り回っているカクベンケイガニが、調べたベンケイガニ類で
唯一吸水毛をもっていることがわかったのが先月です。

吸水毛というのは特定の種のカニが脚の付け根にもっている毛の房の
ことで、これをわたしのグループはそう呼んでいます。

つまり、彼らは乾燥した干潟で活動する際に体内の水分が
なくなると、エラが乾燥してしまい、窒息する恐れがあるため、
なんとか水分を補給するためにこの毛を活用しているのでは
ないかというのが私たちの仮説です。

でも、干潟ではなく、どちらかといえば岩場の岩のすき間とかで
活動するカクベンケイガニにこの毛の束があるのには、実は
びっくりしていたのです。

その毛の顕微鏡写真は、何日か前に載せていますので、
どうぞご覧ください。

昨日は、干潟のカニのハクセンシオマネキの吸水毛を観察し、
写真を載せておきました。

いずれの吸水毛も、驚くべき形態でした。

一口で言えば、カクベンケイは羽毛状の毛の束でした。

ハクセンシオマネキは、羽状の毛などまったくなく、そのかわり
1本1本がくびれのある毛でできていました。

それでは、ハクセンシオマネキと同じようなところに生息している
コメツキガニはどうでしょうか。

ハクセンシオマネキはスナガニ科、コメツキガニはコメツキガニ科
ですから、違いがあるのではないかという期待がありました。

では、写真をどうぞ。



sizeretouchDSC_4100.jpg


sizeretouchDSC_4142.jpg


まずびっくりしたのは、1本1本の毛にくびれらしきものはあるのですが、
左右で少し位置がずれていますね。

これって、くびれではなく、ねじれですよね。

次に、毛の表面にトゲというかキバというか、点々と並んでいます。
すごいですねえ。

さらに、ところどころに、毛の直径の2倍から3.5倍ほどの長さの直毛が
見られます。


いやー、恐れ入りました。

クロベンケイの羽状毛でたまげ、ハクセンシオマネキのくびれでうなり、
今日は、コメツキガニの複雑な構造にぞっとしました。


カニたちが、海からしだいに干潟や陸上に適応放散している過程で
さまざまな形態や機能を獲得してきたのはまちがいありませんが、
まさかこんなちっぽけな脚のつけねの毛の束にまでその証拠が
みられるのは、ほんとうにびっくりです。

中学生たちともども、わくわくしています。


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