中学生のポスターの内容

中学生の作った学会発表用のポスターについて、紹介しています。


最後の「考察」と「課題」には、次のことが書かれています。

「考察」

「吸水毛は地表面から水を補給するための器官と言える。水際から遠い
ところに生息する4種類に見られ、やや遠い所にすむ数種にも剛毛が
見られたことから、生息域と発達具合の相関があると考えられる。
吸水毛をもつ4種類のうち、カクベンケイガニだけが異なる分類群に
属す。本種は体も薄く、垂直な岩場を高速で走ることができる。
この俊敏さと引き換えに体内に貯える水分を減らし、吸水毛をもつ
ことでそれを補っているのではないだろうか。」


「今後の課題」

「・干潟に生息するカニ類や半陸棲カニ類全種について、吸水毛が
あるかどうかを調べる。
・ない場合、給水のしかたを調べる。
・イワガニ類でなぜカクベンケイガニだけが吸水毛をもっているのか、
生態や形態を綿密に調べ、解明する。」


となっています。


ここで、おやっ?と思われた方もいらっしゃることでしょう。


まず、昨日の記事に書いたように、こんなに顕著な器官の図や写真が、
これまで、啓発書や図鑑にまったく載っていないのです。
不思議ですねえ。


一般的にはあまり目立たないのですが、その気になれば肉眼でも極めて
はっきりと認識できる器官です。

こんな大きな器官が見落とされていたはずはないのですが、、、。

しかも、干潟の生き物にとっては水は生死にかかわる重要なファクター
ですから、それに係わることは啓発書にしっかり図示されて
しかるべきだとおもうのですが、、、。

接写リングさえあれば、だれでも撮れますし。


また、それだけはっきりした器官ですので、分類学上の大きなキーに
なるはずです。

普通に考えると、吸水毛のようなはっきりした器官なら、ある特定の一群の
カニたちに限定的にあり、他のカニたちにはまったくないということに
なるでしょう。

そうであれば、さほど取り立てることはありません。

ところが、

スナガニ上科では、
  スナガニ科……2種(スナガニとハクセンシオマネキ)ともにあり。
  コメツキガニ科……1種(コメツキガニ)にあり、1種(チゴガニ)にはなし。
  オサガニ科……2種(オサガニ、ヤマトオサガニ)ともになし。

イワガニ上科では、
  モクズガニ科……2種(アシハラガニ、ヒメアシハラガニ)ともになし。
  ベンケイガニ科……4種(アカテガニ、クロベンケイガニ、
         ユビアカベンケイガニ、フタバカクガニ)にはいずれもなし、
           1種(カクベンケイガニ)にあり。


同じ科の中でもあるものとないものがいたり、まったく異なる上科に渡って
あったりしたわけですから、どうやら、特定のグループを特徴付ける
器官ではないようです。


干潟の高い位置に生息するスナガニ類の3種に限って吸水毛が見られた
のは良しとして、上科というレベルで大きく隔たったカクベンケイガニに
限定的に同じような吸水毛が見られたのは、実に驚きです。


さらにおもしろいのは、吸水毛の外観はいずれも筆の穂先のように見えますが、
顕微鏡で観察するとスナガニ上科の3種とカクベンケイガニでは大きく形態が
異なっていたのです。
(昨日の図をご覧ください。)


こうなると、まさに中学生が書いた考察に信憑性が出てきます。


じゃあ、唯一、イワガニ科で吸水毛をもつカクベンケイガニって
いったいどういうカニかと疑問がわきます。


カクベンケイガニは、海岸や河口の潮上帯、つまり満潮でも潮を
かぶらないところが生息域で、岩の割れ目の中に潜んでいます。

昼間も活動しないわけではありませんが、わたしの観察したところでは、
日が落ちると割れ目から出て来て、夜間にかけてさかんに活動しています。


sizetrimretouchDSC_5569_201710011827559c8.jpg


sizetrimretouchR0011566.jpg


このカクベンケイガニは、日本では垂直な岩肌を素速く走ることのできる唯一の
カニとして知られています。

かれらは進化の過程で体が薄くなり、俊敏さを得ることができたと考えられます。
チーターのイメージですね。

スマートな体型になったため、体内に貯えることができる水分の量が減って
しまいました。

それを補うため、吸水毛を獲得したのではないか。

岩の割れ目には、雨でたまった水があるでしょう。
それを彼らは利用しているのではないかという、大胆な仮説を提唱する
ことになったのです。

もしそうなら、生物界にみられる収斂(しゅうれん)現象の一つの例と
考えられます。


オーストラリア大陸を中心に、有袋類がいるのをご存知でしょうか。
有名なのはカンガルーとかコアラですね。

その他にもフクロモグラ、フクロモモンガ、フクロヤマネ、フクロリス、
フクロキツネ、フクロオオカミ、フクロネコなど、有袋類という小さな分類群の
中で、いろいろな種が分化しているそうです。


一方、旧大陸では、それぞれモグラ、モモンガ、ヤマネ、、、、がちゃんと存在して
おり、これらは、胎盤をもつ、大きなグループ(有胎盤類といいます)の中の一員です。

まったく違う環境でまったく違う系統の生き物が、生息域を広げながら
進化した結果、つまり「適応放散」した結果、同じような体つきになったわけです。

類縁関係はまったくないのに、進化の結果、体全体や体の一部、あるいは
機能がよく似てきた場合、このことを「収斂現象」といいます。
これは高校で習います。


さて、カクベンケイガニの話に戻しましょう。

イワガニ上科に属するカクベンケイガニは、スナガニ上科の仲間とはまったく
異なるグループです。

にもかかわらず、吸水毛を共通にもっていることがわかったのです。

スナガニ科の潮間帯上部に棲むカニたちが共通でもつことにいたった
吸水毛を、カクベンケイガニは進化の過程で独自にもったのです。
つまり、両者の吸水毛は、収斂現象だったのではないかということですね。


こういったことを、中学生たちと議論し、彼らはレポートにまとめました。


これが本当かどうかわかりませんが、脚の付け根の毛の観察から、
ここまで大胆に話が発展すると、おもしろいを通り越してゾクゾクします。


今週末の日本甲殻類学会で、どのようなアドバイス、意見、反論などをいただけるか
大変に楽しみです。




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中学生のポスターの内容

ポスターの後半では、4種のカニの吸水毛が、顕微鏡写真で示されています。

そしてその下に、それぞれ典型的な毛を1本ずつ拡大し、スケッチしています。

この図は、一昨日の記事に掲載したポスターで、かろうじて見えるとおもいますが
重要な図ですので、ここでオリジナルを掲載しておきます。


このような図は、これまで少なくとも啓発書や図鑑では見たことがありません。



size640吸水毛形態一覧カラー薄いblog


もし未発表であれば、今後この図が、いろいろな著作物に引用される
かもしれません。


果たしてこれまですでにこのような図や写真が報告されているのかどうか、
素人の私では調べる限界があります。

そこで、日本中の、あるいは海外からもその道の専門家がお集まりになる
日本甲殻類学会でポスターを掲示して見ていただき、教えていただこうという
考えです。

学会での発表は、まさに、そこに大きな意義があるのです。



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学会発表用ポスター原稿が完成

中学生がカニの研究を日本甲殻類学会で発表することに
なりました。
このことは、すでにこのブログで報告済みです。

いよいよ来週末となりました。


昨日、生徒たちがひとまず完成させ、今日、少し手を
加えました。

なんとかこれで、間に合いそうです。


こんなかんじです。


カニポスター


ここまで縮めるとほとんど読めませんが、実際にはB1サイズですので、
新聞紙の見開きよりさらに一回り大きくなりますので、十分に読めると
おもいます。

ほっとしました。


かれらは、現在、想定質問の回答を作っています。
だいぶ、表情が真剣になってきました。


最後まで頑張って欲しいですね。


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礼状の礼状

中学生の男子が、日本各地の海水の塩分濃度と比重を測定し、
レポートにまとめたことはすでに2週間前くらいに報告済みです。

海水を提供した方が、お母さんの縁故だったり私の知り合いだったり、
ともかくたくさん集まりました。

彼は、せっせと鉛筆で手書きのお礼の葉書を送りました。

その礼状の礼状が届いたことも何日か前に記事にしました。

今日は、お母さんからラインで、「礼状の礼状が届きました。」
と、画像を添付してくださいました。

葉書を送って下さった方は、たしか、お母さんのお知り合いの
そのまたお知り合いの方です。

つまり、海水の研究をした中1男子とも、お母さんとも面識は
ないはず。

そんな方が、丁寧に葉書をよこして下さったようです。


sizeretouch20170914231732.jpg


中学生にもわかるように丁寧に書かれた葉書に、わたしも感動
しましたね。


たまたま、中1の彼は、昨日、レポートのダイジェスト版を作り、
おそらく今日、海水を送ってくださったそれぞれの方に発送したはず。


ひょっとしたら、またそれをお読みになった方から感想が届くかも
しれません。

とはいえ、彼からのお礼として送ったのですから、それは期待はして
いませんので、ご心配なく。


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女子も頑張る

男子たちの話が続きましたが、女子たちも頑張りました。

作品については、いずれ取り上げますが、今日からさっそく
ポスター作りに取り組みます。


sizeretouchIMG_3770.jpg


いきなりポスター作りといっても、どのようにしたら良いのかわかりません。

幸い、過去のポスターがたくさん張り巡らされていますので、それを
まず説明しました。

日頃見慣れた作品ですが、実際にじっくりと見ると、細かなところまで
配慮されているので、びっくりです。

特に小学生たちのポスターが出色です。


これに負けじと、ライバル心に火が付いたようで、さらに
良いものを目指すと早くも真剣モード。

期待したいとおもいますね。



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ようこそ SCOOTIST です
ようこそ、SCOOTIST です。

時々、ビッグスクーターにまたがって、中・四国の自然にひたりに出かけます。
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