オオサンショウウオ

ケニアシリーズもぼつぼつ飽きてこられたでしょうから、
ここらで休憩です。

「スクーターで撮り歩き」といいながら、このところ寒くて
あまり出かけていませんでしたし、天気もいいので、久しぶりに
スクーターを飛ばして広島市の「アステール」プラザまで講演を聴きに
出かけました。

いきなり余談ですが、「アス ass」というのは、「ロバ」とか「ばか」という意味の英語です。
もうひとつの意味は、「ケツ」です。
「おしり」ではなく、もっと品を落とした「ケツ」ですね。
「テール」はしっぽですよね。
この建物、もうちょっといい名前を付けられなかったのかなあとおもいます。

そういえば、広島中心から郊外に延びるゴムタイヤ電車で有名な
「アストラムライン」も、発音からいえば「ケツ電車」ですよね。

いずれも、それらとは違う意味合いをもって名付けられたとおもいますが、
英米人は、きっと言いにくいです。


さてさて、本題に入りましょう。
昨日は、私にしてはめずらしく、講演会に行ってきました。

 主催は、中区図書館で「大人のための図書館セミナー」
 演題は、「オオサンショウウオと共に生きる」
 演者は、安佐動物公園の 桑原一司 副園長

会場に入ると、いきなり、ポリバケツに入った生きたオオサンショウウオが
出迎えてくれました。

生体


興味深かったのは、動物公園が取り組まれた研究の経緯と、その研究から
明らかになったこと。
そして、とかく生物を保護する側と対立しがちな地域との連携が、
実にうまくできていること。

桑原副園長の、オオサンショウウオのようなゆったりとしたお話ぶりが、
いい雰囲気でした。

講演では、冒頭、
「実際に野外でオオサンショウウオをみたことある人は手を挙げてください。」
に対し、31名の受講者のうち、なんと7、8名が挙手され、びっくりしました。
もちろん私も野外ではみたことはありません。
どうやら、調査地である北広島町の住民の方々がたくさんおいでになっているようでした。
講師紹介のあたりから、うきうきわくわくのおばさま方たちの様子をみて、
おかしいなあと思っていたら、ファンの皆様がただったのですね。
ここらにも、地域との密着したすてきな関係がみてとれました。

つぎに、お話は、

1 分布の中心は中国山地で、九州・四国にもいるが、フォッサマグナ以東には
 いない。世界的にみると、地球儀の上に鉛筆で点をつけたくらいの広さ。

2 他のサンショウウオ類と違う特徴は、

  A 世界最大 B 生きた化石 C 一生を水中で暮らす

3 2300万年前の地層から化石で出た。

など、教科書的な内容を枕に、動物公園が発見した産卵行動へと話はつながります。

結論からいえば、産卵には巣穴が必要で、これは体がようやく出入りできるくらいの
出入り口が一つあり、中が少し広くなっている穴です。
天然である必要はなく、土管などでこれを川に設置してやるか、あるいは飼育下でも
水槽内にこのようなコーナーを作ってやれば産卵するとのことでした。
 写真は、人工巣穴の内部です。出入り口は右上。

産卵用の穴の中

ひとことで書けばこんなことですが、9年という長い期間にわたる観察と、
試行錯誤によって、やっと飼育下での産卵成功が達成されたのです。

実は、ライデン博物館から、
「世界初を名乗るな。」
とクレームがあったとのこと。
シーボルトが日本からヨーロッパに持ち帰った個体が、80年前に飼育下で
繁殖した例があると、連絡があったようです。
演者は、これも率直に認められており、好感がもてました。
世界で二番目とはいえ、その道のりを考えると、決して遜色のないものだとおもいます。

最も関心をもったのは、オオサンショウウオの繁殖期のふるまいです。

ふつう、動物のオスたちは、自分の遺伝子をできるだけたくさん残すような
戦略を持ちます。
オットセイのオスが、他のオスたちを押しのけてハーレムを作るのも、
多くの鳥のオスたちがカラオケやファッションショーでメスの気を引くのも、
そういう意味があります。
できるだけ強い個体、できるだけメスを引きつける力のある個体の遺伝子が
メスに届き、子孫に伝わるようにです。

聞けば、オオサンショウウオも、産卵用の巣穴にどっかと居座るのは、
大型の個体(ヌシと呼ばれている)で、繁殖期にはメスたちがそこに入っていくのですが、
なんと、ヌシ以外のオスも、ぞろぞろ入っていって、繁殖に参加するのだそうです。
この間、ヌシは、他のオスを追い払ったり、殺したりはしません。
もちろんカラオケも歌いません。

動物学の常識からはずれますが、実際のフィールドでの目撃と、観察小屋での
長期にわたる観察で、これが間違いないことがわかったそうです。

繁殖期のメスは、オスの攻撃性を抑制する化学物質を出して
いるのではないか、というのが、演者の予想です。

さらにおもしろいのは、繁殖期が終わったら、メスも他のオスも産卵穴から
退場し、ヌシが一頭だけで巣穴を守ります。

もういちど、上の写真を拡大してご覧ください。
ヌシは、巣穴の出入り口に内側から頭を突っ込んで、魚やサワガニ、
その他の敵の侵入を防いでいます。
卵はすでにふ化し、幼生がたくさん黒くみえるとおもいます。
産卵が9月上旬で、巣穴を放棄するのが2月上旬ですから、半年近くの間、
1頭だけで卵や幼生の保護をするのです。

--できるだけたくさんのオスの遺伝子を残して、環境の変化に
対応できる子孫を残し、卵や幼生の保護は、最も体力のある
個体に任せる。
そして、自分たちはつぎの産卵という大仕事のために、体力を蓄える。--

実にしたたかなメスの繁殖戦略です。
おそれいりました。

オオサンショウウオたちは、産卵のために、長い距離を上流へと移動します。
途中で堰堤(えんてい)があると、遡上できません。
ここを登ろうと何度も挑戦してはずるずると落ち、足裏を傷だらけにして、
足止めを喰っているたくさんの個体の写真。

やむなく堰堤の下で産卵してしまい、卵が流されてしまった写真も、胸を打ちました。

これに、地域が立ち上がります。

「アユを食って困る」といっていた地域の人々が、そんなにたくさん
魚を食べないことや、生物学的な意義を知り、しだいに保護の運動が
定着していきます。
行政も動き、産卵できる河川改修に乗り出しました。

しかし、せっかく作った巣穴が砂に埋まってしまうという事態が
生じます。
これに対しても、地元の人々が協力して保全に取り組み、今なおそれが続けておられます。


演者は、「知ること」と「譲ること」という共存への道しるべになる
キーワードを示してくれました。

とかく、自然や特定の生物を保護しようとすると、地元の経済の振興や
災害対策工事などと対立しがちです。

しかし、演者たちのグループは、じっくり、やさしく、ていねいに
地元の人々と話をし、おそらく時にはいっしょに調査をしたり、
観察したりなさったことでしょう。

その結果として、いまの地域の方々の「共存しよう」という行動があり、
アステールプラザへの応援団があるのだろうと思います。

他の地域での進め方に、おおいに参考になるとおもいました。

いい勉強をさせていただきました。

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