ノートをつけること

日本の科学界が揺らいでいます。

ノーベル賞を受賞した大御所が、大勢のマスコミの前で
頭を下げていますね。


わたしは理科教育に携わってはいますが、科学者でも研究者でもないので、
あまりこの話には触れようとはおもいませんでした。

また、週刊誌やらネットに下世話なことがあれこれ書かれている
ようですが、これらにも興味はありません。

そもそも生半可な知識であれこれ述べようという気もありませんし、
解決なり見通しなりは、専門の方に任せざるをえないというスタンスでした。

そうはいってもご承知のとおり、科学界では大変大きな話題で、もちろん
関心はものすごくありますが、その後の経緯については、じっくり見守る
だけだと決め込んでいたのです。


ただ、ある報道を見てしまってから、ああ、これはダメだと思い始めましたね。

あわよくば、誰か他の方が証明してくれて、逆転ホームランもなきにしも
あらずかなとさえおもっていたのですが、、、。

「3年間でノート2冊」という話です。

これも、実は本当かどうか、あやしいものだとおもっていますので、
このことについて直接批判しようとはおもいません。

ただ、事実でないなら、なぜ早く表に出ていないノートを出さないのか、
不思議にはおもっています。


さて、今日お話ししたいのは、彼女のノートについてではなく、実験ノート
そのものについてです。


まず、科学研究でノートが重要であることは言うまでもありません。

研究者として第一歩を踏み出したとき、これは徹底的に教えられるはず。

紙を差し替えできるルーズリーフではダメだとか、まず日付を入れろとか
余白にはあとで書き加えることができないように斜線を入れろとか、
メモでも、思いついたアイデアでもとにかく時系列に書いていくように
指導を受けます。

研究者にとって、休みの日以外は少なくとも1日に1ページを使います。

実験の手法、データ、そこから考えたアイデア、同僚の意見などなど
瞬く間にノートは埋まっていきます。

それに、指導者から指導を受けるのに、ノートがないなんてありえません。
指導者はノートをもとに指導をし、場合によってはそのノートに指導者が
メモを書き残します。もちろん日付も入れて。

また、たとえばふたりの研究者が同じような発明や発見に達した時、どちらの名が
残るかは論文の発表年によりますが、同じ年であれば、ノートがものを言います。

逆に言えば、ノートが唯一の判定材料ですから、それがずさんであれば
いくらいい研究を先にやっていても、プライオリティーは失われて
しまいます。


それに、最先端の研究でなくても、実験データや手法をメモしたり
結果を記録したりするのにノートは絶対に必要です。

わたしもマメ研究者たちに、ノートやカードを書くようにしつこく
言いますが、なかなか定着しません。
板書してやらないと、多くの子が、ノートをつけようとしないのです。
あるいはマットを作ってやらないと、埋められないのです。

実験や研究を積み上げ、最後にレポートを書く段になってようやく
ノートやカードの必要性を身にしみて感じますが、時すでに遅しデスね。


なぜ、子どもたちは、本当の意味でノートがとれないのでしょうか。

黒板(うちではホワイトボードですが)に書かれたことをそのまま
写すことは実にたくみです。
反射的ですらあります。

小さい頃からよく訓練されているようで、ホワイトボードにあれこれ書くと、
小1の子でさえもそのとおりに書き写します。

もっといえば、総じて、書き写すことが勉強だとおもっているフシがあります。

当然、板書しないことはノートに書きません。

ですから学校の先生は、できるだけノートにきちんと書かせることに
意を注ぎます。
子どもたちはその意に添ってノートをとります。


これを義務教育の9年間、それに加えてその後の3年間もやるわけです。


実は、ノートをきちんと写せば成績が上がるかと言えば
そうとは限りません。

そもそも、小学生たちは授業でとったノートを家でなんども
おさらいするなんてことはめったにありません。
それに板書を写しているときには、先生の話が頭に入りません。
(もっとも、子どもが板書を写しているときには、良心的な
先生はしゃべりませんけど。つまり思考の流れが途切れがちに
なります。)

ですから、授業できちんと板書して、きちんとノートさせるのは
時間がかかるほどにはあまり子どもらの思考を高めることには
役立っていません。

それよりも、一人一人に相対して、質問-回答を繰り返したり、
子どもに説明をさせたり、文章を自分で組立てて書かせたりする方が
よほど効率が良く、頭を活性化できます。

緊張感に置くことで子どもたちを鍛えることができますし、
ノートを写すだけの緊張感のなさからは、あまり成果は期待できないと
おもわれます。

それに、日本の教科書はたいへんよくできていて、読めばわかります。
立派な副読本もありますし。

ノートは、自分にとって知らなかったこと、大事な要点、覚えて
おかなければならないこと、教科書に書いてないこと、などを
メモし、あるいは、論理構成を考える下書き、計算メモ、
図解などに使えるように指導すべきなのです。
時に落書きがあってもいいし、マンガの練習もアリです。

ノートは、板書を模写するだけのものではなく、あくまでも
創造的なものにしないと意味がありません。

そして、自分なりにノートを「整理して書ける」ようになるように
訓練する必要があるのではないでしょうか。

そんな訓練をしないまま大学生になっている状況があるのでは
ないでしょうか。


干潟ガールズも、実験のデータを書くときに最初は紙切れに書いたり
ノートに支離滅裂に書いたり、そのためにデータをなくしたり、
誤解をしたり、大変でした。

これは1検体1枚のカードを使うことを指導し、彼女らでそれを作り
解決しました。

sizeretouchR0016408.jpg

通し番号、日付、種名、採集データなどの他、どの作業を
誰が責任をもってやったかなどを書くように工夫しています。

このカードを作るのに彼女らは半日ほどかかりました。
このカードを使っているうちに使い勝手などがわかり、
改良もしていきました。


昨日登場したビタミンCガールズも、尊敬する先輩のマネをして、
カードを作りました。

sizeretouchR0016410.jpg


干潟ガールズはこのカードを185枚書きました。

ビタミンCガールズはまだ29枚です。


必要十分な情報を自分たちで便利のいいように記録する手法を
考え、実践し、それをもとに信頼できる研究につなげていく。

これは、板書を写すことだけでは生まれません。

ていねいな小学校の先生方の板書は、底辺の底上げという点では
大きな成果をもたらしました。

上級に進むにつれて、受け身から自立へのノート作りへと期待を
したいとおもいます。



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この記事へのコメント

ION : 2014/04/04 (金) 20:20:23

私にとってもためになるいい記事でした。
私達の仕事も同じです。
とにかく書き留めておくというのが
とても大事になります。
違っていてもいいからその時に感じた事、気がついたことを文字で残すことで後で解ることもあります。
最近も残しておいて本当に良かったと思える事がありました。
だから法律の保存期間を過ぎても、
廃棄してしまうことなく、
カルテもレントゲン写真も保存しています。

今回の研究所の記者会見のテレビの放送の後に
長い間スキーのモーグルを頑張ってきた女性選手の引退記者会見。なんだか久しぶりにテレビをみて、
色んな意味で、なんとも言えない淋しい気持ちになりました。

スクーティスト : 2014/04/04 (金) 21:40:45

コメントありがとうございます。

いい記事だなんてお褒めいただき、恐縮です。

日頃思っていることを少し書きだしたら長くなってしまい、
途中で止めようかとおもったのですが、だらだらと
書いてしまいました。

えらそうに書いて失礼しました。

カルテもレントゲン写真も残しておられるのですね。

いつ役立つかわからないのに、捨ててしまったらほんとに
どうしようもなくなるってことをよくおわかりなのでしょうね。

記録の大切さって、なかなかピント来ませんが、
子どもらに伝えておかなければとおもいます。

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