貝のなんでも鑑定士

先日の10月10日のことです。

広島干潟生物研究会の今年最後の観察会が予定されていました。

ところが台風が近づいており、前の晩では判断がつかず、当日の朝、
広島直撃のおそれはないとはいえ、風雨が強まる可能性が大きいとのことで
中止を決定し、予告通り、朝7時にブログとホームページにその旨を掲載しました。

ただ、ひょっとしたら中止の連絡が届いていない人がいるのかもしれないと、
念のため集合時間の30分ほど前に現地に出かけてみました。

予想よりも雨雲の発達が遅れたようで、曇り空でした。

中止にしなかったら良かったのになあとおもいつつ、せっかく出かけたのだから
付近を観察して回りました。

と、フトヘナタリの群生地の中に、みかけない巻き貝がいるではありませんか。


sizeretouchDSC_6833.jpg


殻の表面の彫刻は摩耗し、つるつるとなり、ここに緑藻がへばりついています。

フトヘナタリにしては独特の模様や彫刻がなく、口の形もやや細長い感じです。

ひょっとしたら、これが探し求めていたカワアイガイではなかろうかと、すぐに
拾って持ち帰り、写真を撮りました。

こんな時は、岡山大学の福田 宏 先生に聞くのが一番です。

メールに写真を添付して送信し、「カワアイガイに間違いありません。」という
返事を期待していました。

カワアイガイの生貝は、おそらく太田川河口域では見つかったことはないはずですから。

すぐに返信がありました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おたずねの画像の個体はフトヘナタリです。相当老成して摩滅していますが、
典型的なフトヘナタリで間違いありません。根拠は殻口です。外唇・内唇が厚く
肥厚して滑らかで白いことと、殻口内部が白地で中央だけが紫がかった茶褐色で、
これはフトヘナタリの特徴なので、仮に殻の他の部分の情報がなかったとしても
ここだけで簡単に同定できます。ちなみにカワアイの殻口唇と殻口内部は黒っぽく、
決して今回の画像の個体のようにはなりません。

また、フトヘナタリは殻が摩滅すると白っぽくなり、その上に緑藻が乗ると今回の
個体のような鮮やかな緑色になりますが、カワアイはどんなに摩滅しても茶色っぽく、
このような緑色になることはありません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

がっかりする間もなく、何という精緻な描写であろうと感動さえ覚えました。
こんな文章は、まさにプロの鑑定士の証しですね。

さらに、そのメールの本文には続きがありました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ところで、私もずっとご連絡せねばと思いつつそのままになっていました。
前回、カワザンショウ類についてのお問い合わせにお答えした直後に、
そちらのブログを拝見させていただき、美しい写真に感動したのですが、
ある日の記事に「カワザンショウ」かまたは「ヒラドカワザンショウ」のどちらかと
して出ていた写真が、明らかにツブカワザンショウ(=ヒメカワザンショウ)でした。
お知らせしようと思ったままつい失念してしまい、どの日の記事だったのかも
わからなくなって、さきほど改めて検索してみたのですが見つけることが
できませんでした。たしか、「子供」という解釈で書かれていたのですが、
写真はツブカワザンショウの成熟個体だったように記憶しています。
うろ覚えで申し訳ないのですが、思い当たる記事と写真はありませんか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それが、この記事と写真です。

なぜか検索フォームに「カワザンショウガイ」と打って検索しても
出てこないので、福田先生もたどり着けなかったのだとおもいます。

「貝 目」で検索したら出てきました。

その写真がこれです。

sizeretouchR0013267_201410160005367c3.jpg
(2013.04.19の記事から)

こんな被写界深度が薄い写真(つまりピントの合っている範囲の狭い写真)で
しかも被写体はわずか2ミリメートルほど。

これを瞬時にツブカワザンショウガイと見極めておられたわけです。

次のようなその根拠も、舌を巻く描写です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうです、まさにこの記事です。
画像の個体はツブカワザンショウの成熟個体で間違いありません。もしヒラド
カワザンショウまたはカワザンショウの幼貝であれば、螺層の膨らみはこれほど
ふっくらしておらず、より直線的で、縫合のくびれもこの個体ほどははっきりして
いないはずです。また、この写真では、殻の体層背面を透過して、軟体の外套膜
背面の水玉模様が不明瞭ながら見えていますが、このような水玉模様は
ツブカワザンショウに特異的で、ヒラドカワザンショウやカワザンショウは、
幼貝・成貝を問わず、外套膜背面は単純に漆黒に塗りつぶされ、白色の水玉
模様にはなりません。さらに、軟体頭部の、左右の眼の距離が短いこともツブ
カワザンショウの特徴です。ヒラドカワザンショウやカワザンショウは小さな幼貝で
あっても、より左右の眼は離れています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まさにプロの鑑定士ですね。
恐れ入りました。

ありがとうございました。


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